「第20話」遺留分制度の見直しで何が変わるの?
今回から再び「40年ぶりの相続法改正とは!?」に戻り、各項目の見直し別に触れていきたいと思います。
知っておかないと困る相続法改正の「第4弾」
※出展 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律等の概要について」
《遺留分制度の見直しで何が変わるの?》
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遺言書を残すなら必ず知っておかなければいけないルール…。
そのルールの名前は「遺留分(いりゅうぶん)」です。
現在…
遺産相続をめぐる争いのほとんどは、この遺留分にまつわる争いと言っても過言ではありません。
遺留分という考え方を知らないまま、遺言書を作ったり生前贈与を始めてしまうのは非常に危険です。
残された家族が泥沼の争いに突入してしまう可能性が非常に高くなります。
今回はこの遺留分という制度を、イラストを使いながらわかりやすく解説していきたいと思います。
《まずは遺産の分け方の大前提について》
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人が亡くなった場合には、その人の遺産は相続人が相続します。
第19話でもかいつまんでお話ししましたが、相続人が複数いる場合には、誰がどの遺産をどれくらい相続するのかを決めなければいけません。
そのルールとは…
まずは第一に「遺言書がある場合」と「遺言書がない場合」とで大きく異なります。
まず遺言書がある場合には、原則としてその遺言書の通りに遺産を分けていくことになります。
一方で遺言書がない場合には、相続人全員での話し合いによって遺産の分け方を決めていきます。
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この話し合いのことを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」といいます。
前回もお話ししましたね…覚えてますか?
もし遺産分割協議に折り合いがつかない場合には、折り合いがつくまで「永久に」話し合わなければいけません・・・
前回、とあるお父さんが遺言書を残してお亡くなりになったお話をしました。
相続人全員が同意した場合「遺言書に書かれた分け方を変更することができる。」というお話でしたね。
遺産の分け方次第で相続税は何千万と変わることがあります!
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ここで重要な点は、相続人全員が同意をすれば内容を変更できるということは、裏を返すと一人でも「私は遺言書の通りに遺産を分けたい」という人がいる場合には、遺言書の内容が優先されるということです。
やはり遺言書の効力って大きいですよね。
《遺留分(いりゅうぶん)とはなんぞや?》
それではここからが本題です!
遺留分について事例を使って解説していきたいと思います。
例えば…
ここに夫、妻、子供2人のご家族がいたとします。
この度夫が亡くなり相続が発生してしまいました。
悲しみに暮れる中ご主人の遺品を整理していると、金庫の中から遺言書がでてきました。
家族全員でその遺言書を開けてみると、中にはとんでもない内容が書かれていました!
遺言書の中身にはなんと「私の遺産は全て愛人に残します」と書いてあります!
こういった遺言書があった場合、ご主人の財産は全て愛人のもとに渡ってしまうでしょうか?
渡ってしまったら困りますよね。
残された家族(特に奥様)は生活できなくなってしまいます。
そうです。
こういったシチュエーションででてくるのが遺留分なのです。
遺留分は一言でいうと「残された家族の生活を保障するために、最低限の金額は相続できる権利」のことをいいます。
ここでのポイントは、あくまで遺留分は権利であるということです。
もし…
遺言書に「あなたに遺産はまったくあげません」と書かれていたとしても、当の本人が「それでも構わないですよ」ということであれば、なんの問題ありません。
あくまで権利ですので、権利を行使するかどうかは本人の自由です。
しかし「遺産がもらえないなんて困る!」という場合には、愛人に対して「遺留分までの遺産は返せ!」と言えば、愛人はその人たちに対して遺産を返さなければいけないことになります。
《遺留分はどのくらい認められているの?》
続いて、遺留分は実際にどれくらいの金額が保障されているの解説していきます。
まずは下のイラストをご覧ください。
まずは「法定相続分」の割合を書いてみました。
この法定相続分という割合は、遺産の分け方の目安として法律で定めているもので、「この通り分けなくてはいけませんよ」という割合ではありません。
あくまで目安として設けられたものです。
ここで前回のおさらい。
それぞれの「遺留分」はどのくらいかというと…。
そう・・・
上の内容でいけば奥様は4分の1、子供達はそれぞれ8分の1ずつということになります。
相続が発生し遺言書の中身を見てみたら、「私4分の1もないじゃない!」「俺たち8分の1もないぞ!」(この状態のことを遺留分が侵害されているといいます)ということになれば、愛人に対してその金額に達するまでの遺産を取り返すことができるというわけです。
実際にこのようなケースが発生した場合には、間に弁護士を入れることが一般的です。
そしてその弁護士が話をまとめながら、遺留分に達するまでの遺産の受け渡しを行います。
この手続きを「遺留分の減殺請求(げんさいせいきゅう)」といいます。
また、この遺留分という最低保障されている権利には、有効期限が存在します。
遺留分が【侵害されていることを知った日から1年】です。
1年を過ぎてしまうと有効期限を過ぎてしまうため、遺留分の減殺請求ができなくなってしまうので、早めに手続きをするようにしましょう。
?※法定相続人が父母だけの場合等には法定相続分の3分の1が遺留分の割合となります。
《遺留分減殺請求権の内容と従来の問題点》
遺留分減殺請求権とは、相続人が遺留分を有している場合に、遺留分を侵害している遺贈などの効力を奪い、目的物を取り戻す権利のことをいいます。
具体的な行使方法としては…
(原則)遺留分減殺請求権者は受贈者などに対し、現物返還を求めることができる。
(例外)受贈者などが価額弁償を選択した場合は、受贈者などが現実にこれを履行し又は価額の弁償のための弁済の提供をすれば、例外的に現物返還の義務を免れる。
というルールです。
ただし…
上記のようなルールでは特に原則の現物返還について、不動産などで遺留分減殺請求権を行使した者と行使された者が共有状態になってしまう…という問題がありました。
冒頭の例でいいますと…
愛人が「価額弁償をします」と言って、もらった家の権利半分を奥さんに返したとします。
そうなると「家(住まい)」については、奥さんの見も知らない愛人と奥さんの共有状態になってしまうのです。
これが大変望ましくないことはおわかりですよね。
そこで…
《改正法の遺留分「侵害額」請求権の設立》
以上のような問題点を解消するため、相続法改正では遺留分減殺請求権の行使方法のうち、原則を廃止し例外に一本化しました。
すなわち…
受贈者などには現物返還という選択肢はなくなり、遺留分を侵害した遺贈などが行われた場合には、侵害額分を金銭で支払う。
ということになったのです。
そこで「遺留分減殺請求権」は、「遺留分侵害額請求権」とその名を変えることとなりました。
ただし…
そうなると受贈者などにとっても困ったことが発生します。
愛人としては「家の対価なんてすぐに払えませんよ!」ということになりかねません。
そこで改正法では…
受贈者などが支払をすることが困難なときは、裁判所に相当の期限を設けることを請求できる。
ということで…
裁判所が金銭債務の全部または一部の支払いにつき、相当の期限を許与することができることとなりました。
これがこの先どう転ぶのか、少しのあいだ見守る必要がありそうです。
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【最後に】
遺留分は最低限相続できる分の財産を保護する制度ですが、「相続欠格者」であったり「相続廃除」となれば、遺留分が認められない場合がありますのでお気を付けください!
「いつか来る相続に備え、その時に困らないように学んでおかなくてはいけないこと。」
弊社ではこのような要素をお客様ごとにお聞かせいただき、配偶者に相続財産のどれくらいを相続してもらうことが一番有利になるか、その「目安」をシミュレーションさせていただきます。
具体的ではないけど、残された大切な家族に苦労をさせないために知っておくべきこと…など、
当社独自のネットワークを活用し、多種多様なニーズをサポートいたします!
まずは下記「お問い合わせフォーム」より、無料相談へお気軽にご相談ください。
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当社では土日祝日のご相談も承っております。(要予約)
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さて…
遺言書を作成するにあたり、遺留分が深く関与してくることがお分かりいただけたかと思いますが、次回に持ち越す話もありますので第20話はこの辺で…。
今回の「遺留分制度の見直し」で何が変わるの?については、意外や意外に知らない方が多い話もあります…。
そこで次回は「40年ぶりの相続法改正とは!?」最終弾のはずでしたが、少しだけ寄り道させていただき、「遺留分の落とし穴」についてお話をさせていただきたいと思います。
次回もどうぞお楽しみに!