賃貸経営において重要な「空室率」は3つの種類にわけられることをご存じですか?
3種類もあると「どの空室率を参考にすれば良いのだろう」と悩む方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、賃貸経営における空室率の種類と目安、空室リスクが上がる原因を解説します。
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賃貸経営の基本となる空室率の種類とは?
空室率とは、物件全体の部屋数に対して空室が占める割合のことです。
空室率の考え方は「時点空室率」「稼働空室率」「賃料空室率」の3つにわけられます。
参考とするには注意が必要な「空室率TVI」についても少しだけ触れますので、それぞれの特徴をしっかり理解しておきましょう。
時点空室率
ある時点の「瞬間的」な空室率を表すのが時点空室率です。
計算当日時点での空室率を示しており、市場調査や管理会社の空室率調査にてよく利用されます。
計算方法は以下のとおりです。
稼働空室率=空室数÷全室数×100
たとえば、全10室中2室が空室だった場合「2室÷10室×100=20」となり、空室率は20%です。
計算方法がシンプルで空室率を算出しやすいですが、瞬間的な空室率のため今後の流れが把握できないというデメリットがあります。
稼働空室率
部屋の総数に対する空室の割合のことです。
稼働空室率を算出するには以下の式を用います。
稼働空室率=(空室数×空室日数)÷(全室数×365日) ×100
たとえば、全10室中2室空いていて、1室は退去から180日間が経過しており、もう1室は20日間空室だったとしましょう。
式に表すと「(1室×180日間+1室×20日間)÷(全10室×365日) × 100=5.47%」となり、1年間で5.47%の空室期間が存在することがわかります。
家賃収入がない期間を把握できるため、物件個別の収支予測を立てる場合に役立つでしょう。
賃料空室率
賃料に着目して空室率を計算したものです。
賃料空室率は以下の計算式で求められます。
賃料空室率=(満室経営想定での家賃収入-実際に得た家賃収入)÷満室経営想定での家賃収入×100
たとえば、全10室ある物件をすべて月々7万円で貸し出す予定だったとしましょう。
この場合「7万円×10室×12か月=840万円」で、満室経営想定での家賃収入は840万円となります。
しかし2室だけ月5万円で貸し出すことになり「(7万円×8室+5万円×2室)×12か月=792万円」で、実際には792万円の収入だったとしましょう。
これを賃料空室率の計算式にあてはめると「(840万円-792万円)÷ 840万円 ×100=5.7%」となり、空室率が5.7%と算出できました。
実際の家賃収入をベースに計算ができ、期間内に賃料の減額が発生したときにも対応できる点がメリットです。
空室率TVIには要注意
3種類のほか「空室率TVI」という空室率もありますが、賃貸経営で参考にするには注意が必要です。
空室率TVIとは、ある不動産調査会社が独自の計算方法を用いて算出したもので、日本銀行のデータでも利用されています。
空室率TVIでは、満室稼働している物件は計算に含まれません。
そのため満室が増えるほど空室率が増加するという現象がおきます。
先ほどご紹介した3つの空室率とは感覚が異なるため、賃貸経営で参考とするには注意が必要です。
賃貸経営における空室率の目安や意識すべきポイントとは?
続いて、空室率において意識すべきポイントと、理想的な空室率について解説します。
空室率で意識すべきポイント
賃貸経営における空室率で意識すべきポイントは「年単位で計算すること」です。
「全10室のうち2室が空室だから空室率は20%」と判断するのは、正しい空室率の捉え方とはいえません。
不動産経営における利回りや金利は、年単位で発生します。
長期に渡って運用する不動産投資では、瞬間的な空室率ではなく、年単位で計算することが大切です。
理想的な空室率とは?
賃貸経営において、空室率20%を1つの判断基準にしている方は少なくありません。
その理由には、賃貸物件における空室率の全国平均が関係しています。
総務省が発表しているデータによると、賃貸物件の空室率は全国平均が20%前後となっています。
そのため、空室率20%を目安にしている方が多く見られますが、この数値はあくまでも平均であり、空室率はどの地域でも同じではありません。
東京都の平均空室率は14.5%なのに対して、福井県は30.1%と約2倍ほどの差があります。
このように空室率は地域によって大きく異なるため、エリアに合わせた適切な数値を設定しなければなりません。
たとえば、駅から徒歩5分以内にある都内の物件であれば、空室率20%では負荷をかけすぎといえるでしょう。
一方、交通の便が良くない地方の物件では、空室率20%でも不足している可能性があります。
一概に空室率20%を目安にするのではなく、地域や物件にあった方法で計算することが大切です。
シミュレーション
空室率を20%にした場合だと、物件の状態がどのようになるのかシミュレーションしてみましょう。
全10室の物件の場合、年間貸し出し可能戸数は「10室×12か月=120室/年」で120室となります。
年間空室率が20%ということは、1年間における空室数は「120室×20%=24室」です。
年間24室が空室となると、以下のような状況が想定できます。
●2室が12か月間空室
●3室が8か月間空室
●6室が4か月間空室
都内の駅近物件では、ここまで空室が出ている状態はほぼありません。
自分の賃貸経営がうまくいっているのかどうかを正しく判断するためにも、空室率は地域や物件の状態に合わせて設定しましょう。
空室リスクが上昇する原因を知って賃貸経営での空室率を下げよう
今後の対策に役立つよう、なぜ空室リスクが上がるのかを理解しておくことも大切です。
ここでは、空室リスクが高くなる主な原因を2つご紹介します。
人口の減少
人口が減少すると住まいの需要も少なくなり、空室率が上がる原因となります。
これから不動産投資を始めるという方であれば、人口が減少している地域は避けたほうが無難です。
一方で、すでに賃貸経営を始めていて、空室に悩んでいるという方もいらっしゃるでしょう。
すでに利益が出ているのであれば、売却を検討しても良いかもしれません。
そうすれば、人口減少に伴う将来的なリスクを最小限に抑えられます。
若い世代が減り高齢者が増えた地域などでは、物件のターゲットを高齢者に絞るという空室対策がおすすめです。
とくに「高齢者単身世帯向け住宅」は需要に対して供給が少ないため、ワンルームマンションオーナーにとっては大きなビジネスチャンスになるかもしれません。
供給過多
空室率が高くなる原因の1つとして、賃貸物件が増加していることも考えられます。
最近では、相続対策などで新しいアパートがたくさん建てられています。
需要が変わらない状態で供給だけが増えてしまっては、空室は増えていく一方です。
まわりにアパートやマンションなどがたくさんある場合には、ほかの物件との差別化を図らなければなりません。
人気の高い設備を導入したりDIY可能にしたりと、ターゲットが魅力的に感じる物件を提供する必要があります。
このように、空室リスクは人口減少や物件数の増加によっても変動します。
空室リスクに備えるには、適切な空室率を理解したうえで、将来を見据えた経営計画を立てるようにしましょう。
まとめ
今回は、賃貸経営において重要な空室率の正しい考え方について解説しました。
賃貸経営をする際は、空室率を年単位で考えることが大切です。
過剰に負担をかけるのではなく、エリアや物件の状態にあわせて適切な空室率を設定しましょう。
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