家賃滞納は大家さんにとって予定していた収入が見込めず、ローンの支払いにも影響ができるため早く解決すべきトラブルです。
場合によっては立ち退き要請をする必要もありますが、果たして賃貸借契約書なしの入居者なら立ち退き要請はできるのでしょうか。
この記事では、賃貸借契約書なしの入居者が家賃滞納した際のトラブルや立ち退き要請について解説しています。
賃貸物件を経営している方は、ぜひ参考にしていただきトラブルのない賃貸経営をおこないましょう。
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賃貸借契約書なしの家賃滞納者に支払いの義務はある?
そもそも賃貸借契約とは、貸主は部屋や物件を借主に貸し、借主はその代わりに貸主に対し家賃を支払うことを明記した契約です。
一般的に賃貸借契約というと不動産会社を仲介し、貸主と借主がお互いに署名捺印により合意した契約書を指しますが、実は契約書なしで口約束だけであっても賃貸借契約は有効です。
そのため口約束だけであっても家賃滞納者は支払い義務がありますので、大家さんとしては家賃滞納者に支払いを催促することは違法でもありませんので安心しましょう。
とはいえ、契約書なしとなると家賃滞納などのトラブルが発生した際に立場が弱くなってしまうので、本来は支払い義務や支払いのルールなどをきちんと契約書に記載して契約するべきです。
賃貸借契約書に記載すべき事項をご紹介していますので参考にしてみてください。
●間取りや建築面積、延べ面積、用途地域などの物件の基本情報
●家賃や契約期間、禁止事項、契約ルールなどの取引に関する項目
賃貸借契約書なしの口約束の契約でも家賃の支払い義務はありますが、家賃滞納者は口約束ではなかなか支払いに応じてくれません。
不動産会社などに仲介を依頼しておらず自主管理をしている大家さんは契約書なしで口約束をしている場合がありますので、とくに注意しましょう。
家賃滞納以外にも?賃貸借契約書なしのトラブルとは?
先ほど賃貸借契約書なしのトラブルとして家賃滞納をご紹介しましたが、契約書なしの賃貸借契約にはトラブルが付き物です。
ここでは家賃滞納以外のトラブルをご紹介します。
契約期間や契約の方法が不明確
契約書なしでは契約期間や契約方法が不明確のまま契約していることが多く、口約束で2年契約としていても更新料を支払ってもらえない可能性が高いです。
また賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約がありますので契約書を取り交わすなら注意しましょう。
普通借家契約とは、賃貸借契約で主に用いられる契約方法であり、契約期間は2年間であることが多いです。
借主の意向で契約更新することが可能であり、更新料は一般的に1か月としています。
一方の定期借家契約は、基本的に更新という考え方はなく、当初契約時に期間を定めて契約します。
貸主が合意すれば、更新ではなく再契約が可能であり、数年後に具体的な活用方法がある場合などに用いられる契約方法です。
契約書なしでは、こういった契約方法も記載できずトラブルになりやすいので注意しましょう。
原状回復義務が曖昧になる
退去時の原状回復義務についても、トラブルになることが多いです。
一般的には、借主に起因する内容については原状回復義務によって借主負担で修補し、経年劣化などについては貸主負担で修補します。
とはいえ、契約書なしでは原状回復義務についても「聞いていない」と言われると反論する術がなく、修補の費用負担に応じてくれない恐れがあります。
クロスの汚れや傷、フローリングの傷など代表的な内容については、原状回復義務として契約書に記載しておくべきでしょう。
設備機器故障時の修理費用の負担がわからない
賃貸物件ならガス給湯器やユニットバス、衛生器具などは、建物に付随しており大家さんの持ち物であることが一般的です。
設備機器は、通常の借主が通常の使い方をしていながらも経年劣化によって故障することもあり、そのような故障については大家さんが費用負担をします。
一方、明らかに故意による故障などは借主が修理費用を負担するものですが、契約書なしでは負担区分が曖昧であり費用負担に応じてくれないことも多いです。
設備機器の故障原因による負担区分や負担金額まで契約書に記載しておいたほうが、トラブルになりにくいでしょう。
利用上の禁止事項を守ってくれない
賃貸物件では、ペット禁止や楽器の演奏禁止といった禁止事項を設けている物件も多いです。
禁止事項の目的は入居者同士のトラブルを避けることであり、守ってくれないようだと入居者同士でトラブルに発展してしまいます。
しかし、実際には禁止事項を守ってくれない入居者も一定数いるので、そういった方には契約書をもって説得しますが、契約書なしでは効力がなく禁止事項を守ってくれる可能性も低くなりがちです。
賃貸借契約書なしの入居者が家賃滞納したら立ち退き要請できる?
一般的に契約書に立ち退き条件が記載されていれば、それらに該当するときに契約期間の途中期間でも立ち退き要請することができます。
賃貸借契約書なしの場合でも、家賃滞納などの正当な事由があるならば、立ち退き要請が可能です。
この場合は即刻に退去してもらうのではなく、1年間から半年前に予告をして猶予期間を設ける必要があります。
予告をしていないにも関わらず、立ち退きを要請することはできませんので注意しましょう。
家賃滞納などの正当な事由がある場合の立ち退きの流れは以下のとおりです。
書面による立ち退きの告知
家賃滞納をしている方は訪問や電話には応じてくれないことが多く、まずは書面による告知をおこないましょう。
書面には、立ち退きの正当な事由や立ち退き料の支払い内容などを記載します。
また書面で通知をすると感情が入らず冷たい印象となり、口論となることもあります。
必要事項を記載するだけでなく入居のお礼などを盛り込み、感情を逆なでしないように注意しましょう。
口頭説明および立ち退き料などの交渉
書面で立ち退き予告をすると、次は入居者に対し口頭で説明をおこないます。
立ち退きに対して不満を抱いている入居者がおられると、引っ越し費用や立ち退き料、場合によっては慰謝料にまで発展する恐れがありますので、トラブルとなるようなら早めに弁護士に相談しておきましょう。
また高齢者などは立ち退きをすることにより、次の入居先を探すのが困難になる場合もあります。
可能なら次の入居先を探してあげたり、行政に相談してみたりすると、立ち退きに素直に応じてくれる可能性もありますので検討してみましょう。
退去手続き
入居者から立ち退きの了承が得られたなら、いよいよ退去の手続きです。
先述したとおり、立ち退き料などの支払いがある場合は、退去を確認してから支払うことが一般的です。
とはいえ、入居者によっては引っ越し費用すら払えない方もいますので、立ち退き料を分けて支払うなど状況に応じて柔軟に対応しましょう。
まとめ
賃貸借契約書なしの家賃滞納者であっても家賃の支払い義務はあるため、立ち退き要請は可能です。
しかし、予告もなく一方的に立ち退きを強制することは違法でありトラブルの原因にもなりますので、丁寧に対応し双方が納得した形で立ち退きをしてもらうことが重要です。
賃貸借契約書なしの契約は、家賃滞納などといったトラブルになりやすいので、事前に支払いルールなどを書面として契約書に残すように努めましょう。
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