所有している賃貸物件が老朽化し、建て替えや取り壊しを検討している方もいらっしゃるでしょう。
その際には立ち退き料を支払い、現在入居している住民に退去してもらわなければなりません。
この記事では、立ち退き料の相場や交渉時の注意点を解説します。
賃貸物件の建て替えや取り壊しを検討中の大家さんは、ぜひご参考になさってください。
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賃貸物件の立ち退き料とは?なぜ必要?
はじめに立ち退き料とはなにか、どんなときに必要なのかを解説します。
そもそも立ち退き料とは?
立ち退き料とは、大家さんの都合で入居者を立ち退かせるときに支払うお金です。
立ち退きとなった場合、入居者は引っ越し代や新居の契約費用などたくさんのお金が必要になります。
その損害を補償するものが立ち退き料と考えると良いでしょう。
なぜ立ち退き料が必要なのか?
借地借家法において、大家さんから入居者へ退去を申し出るときには「正当な事由」が必要とされています。
正当な事由とはたとえば以下のようなものです。
●大家さんが建物の使用を必要とする事情がある
●老朽化により建物を建て替えたい
●都市再開発に伴い建物を解体したいなど
いずれのケースにおいても立ち退き料を支払わなければ「正当な事由」と認められないことがほとんどです。
上記の理由では正当な事由として弱いものを、立ち退き料を支払い補完することで「正当」であると認められるようになります。
ここで注意したいのが、立ち退き料さえ支払えば入居者を退去させられるわけではないということです。
立ち退きを求める正当な理由がない場合には、立ち退き料を支払っても入居者を退去させることはできません。
立ち退き料は、あくまでも正当事由を補完するものと覚えておきましょう。
立ち退き料がいらないケースもある
前述したように入居者に退去してもらうには立ち退き料が必要です。
とはいえ、立ち退き料は法律で定められているわけではありません。
入居者との話し合い次第では、立ち退き料を支払わずに済む場合もあります。
また、以下のようなケースでは一般的に立ち退き料は発生しません。
●入居者が家賃滞納などの契約違反をした
●契約更新のない定期建物賃貸借契約を結び、契約期間が満了した
●契約時に期限を設けて賃貸借契約を結んだ
そのほか「賃貸借物件に重大な危険が発生した場合」にも立ち退き料がいらないとされています。
ただし判例が少なく、立ち退き料が不要と認められるケースはごく稀です。
賃貸物件の立ち退き料は平均いくら?相場と内訳を解説
ほとんどのケースで立ち退き料が必要と分かったところで、気になるのは金額ではないでしょうか?
ここでは、立ち退き料の相場と内訳について解説します。
立ち退き料の相場は約家賃6か月分
立ち退き料の平均相場は家賃の約6か月分と言われています。
とはいえ、立ち退き料がいくら必要か明確な決まりはありません。
はじめの交渉で入居者が納得してくれれば、相場よりも安くで済むことがほとんどです。
立ち退き交渉は長くなればなるほど大家さんにとって負担が大きくなります。
なかには立ち退きを拒否して、立ち退き料を多く取ろうと考える入居者もいるかもしれません。
交渉をスムーズに進めるためにも、入居者と良い関係を築いておくことが大切です。
立ち退き料の内訳は?
立ち退き料の内訳がどうなっているのか気になる方も多いでしょう。
ここでは立ち退き料の内訳をご紹介します。
新居の費用
新居に関わる初期費用も立ち退き料に含まれます。
初期費用とは、敷金や礼金、前家賃(1か月分)、不動産会社に支払う仲介手数料、火災保険料などです。
敷金・礼金は家賃の1~2か月分、仲介手数料は「家賃の1か月+消費税」が相場です。
たとえば、入居者が家賃7万円の新居に引っ越す場合「7万円(前家賃)+14万円(敷金礼金1か月分)+7万7,000円(仲介手数料)」で、初期費用として約28.7万円かかります。
引っ越し費用
引っ越し費用とは、引っ越し業者に荷物の運搬を依頼する際にかかる費用です。
料金は荷物の量や時期、引っ越し先の距離などによって異なります。
単身者は約4万~5万6,000円ほど、ファミリー層は子どもの人数によって異なり、3人家族で9万円程度が相場です。
上記の金額はいずれも通常期(5~1月)の全体平均なので、繁忙期(2~4月)にはさらに料金が高くなります。
インターネット回線の移転費用
旧居でインターネット回線を利用していた場合、新居に移転する必要があります。
立ち退きがなければ発生しなかった費用なので、インターネット回線の移転費用も基本的には大家さん負担です。
旧居で使用していたインターネット回線を新居でも継続して使う場合、工事費用が0円になることも少なくありません。
ただし、移転ができずに解約するとなると解約費用も必要です。
余裕を持って2万円ほど見積もっておくと安心でしょう。
慰謝料や迷惑料
一般的には上記の費用が立ち退き料となりますが、慰謝料や迷惑料が必要なケースもあります。
たとえば「1か月後には建物を解体したいからすぐ退去してほしい」など、入居者にとって負担が大きい場合です。
ただでさえ立ち退きで精神的な負担を負うのに「すぐに」となると納得できない入居者も多いでしょう。
このような場合には、慰謝料や迷惑料を含め相場よりも高い金額で交渉する必要があります。
金額に明確な決まりはありませんが、家賃の8~10か月分に設定すると納得してくれる可能性が高くなります。
賃貸物件の立ち退き要求における注意点
最後に、立ち退き交渉をスムーズに進めるために知っておきたい注意点をご紹介します。
立ち退きの理由をきちんと伝える
入居者に立ち退きを依頼する際は、理由をしっかり話すようにしましょう。
住み慣れた家を退去するとなると、労力だけでなく精神的にも負担がかかります。
理由を明確に伝えずに立ち退きだけ要求されても納得しにくいでしょう。
交渉をスムーズに進めるためには、入居者に立ち退きの理由をしっかり伝えることが大切です。
期間満了の6か月前までに解約の申し入れをする
入居者に立ち退きを依頼する際は、契約期間満了の6か月前には通知しなければなりません。
立ち退きまでの期間が短いと慌てて新居を探さなければならず、入居者が不満に思う可能性が高くなります。
立ち退きを了承してもらうためにも、6か月~1年前には退去の申し入れをおこないましょう。
立ち退き交渉ができるのは大家さんと弁護士だけ
賃貸業務を管理会社に委託している場合、立ち退き交渉も任せたいと思う大家さんは多いです。
しかし、管理会社は立ち退き交渉ができません。
どうしても自分で交渉できない場合には、弁護士にお願いすることになります。
もっともおすすめなのが、弁護士に相談しながら大家さん自身が交渉する方法です。
はじめから弁護士に任せることもできますが、大家さん自身が交渉すれば入居者も誠意を感じ、交渉がスムーズに進む可能性が高くなります。
また、万が一トラブルがあった際には、すぐに弁護士に対応してもらえるという安心感もあるでしょう。
どうしても自分で交渉できないと感じる場合にのみ弁護士に依頼して、できる限り自分で入居者と話合うのがおすすめです。
まとめ
賃貸物件の立ち退き料について解説しました。
長期的な賃貸経営において、建て替えは避けてとおれないものです。
誠意をもって入居者と向き合い、話し合いをスムーズに進められるようにしましょう。
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