日本の高齢化が加速するなか、賃貸物件においても入居者が認知症になることは身近な問題になってきています。
管理している賃貸物件に入居している方が認知症になると、さまざまなトラブルが起きるリスクが高くなります。
入居者が認知症の方の場合、どのように対応したら良いのでしょうか。
そこで今回は、賃貸物件を管理・経営している方に向けて、入居者の認知症トラブルについてご紹介します。
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賃貸物件の入居者が認知症になることで起こりうるトラブル
認知症になると認知機能が低下し、身体や精神にさまざまな支障が出てきます。
これまで普通にできていた日常生活が困難になり、通常発生しにくい予想外のトラブルが起きてしまいます。
「入居者に認知症の方はいないから」と安心していても、今後も認知症にならないとは限りません。
管理している賃貸物件の入居者が認知症になったときにスムーズに対応できるよう、想定されるトラブルを把握しておきましょう。
家賃滞納トラブル
認知症を患ってしまうと記憶障害や、管理能力の欠如により家賃滞納をしてしまうトラブルが起きやすくなります。
何か月も家賃の催促をしているが、結局何か月も家賃を滞納したままになっているというケースが多いです。
家賃を滞納したからといって、すぐに強制退去が認められるわけでもなく、賃貸物件の管理者は頭を抱えています。
異臭・ゴミ屋敷トラブル
ついこの間まで綺麗に管理されていたのに、ある時期から賃貸物件の入居者の部屋が汚い、嫌なにおいがすると思ったら認知症が進行していた、というトラブルは少なくありません。
認知症が進むと、だんだん身の回りの管理ができなくなります。
そのため、室内で重なるようにゴミがたまっていき、異臭やハエなどの害虫が大量発生してしまいます。
それだけではなく、入居者本人が入浴自体を忘れてしまったり、排便のコントロールが効かなくなったりするほど認知症が進行してしまうこともあるのです。
異臭や害虫発生は、近隣住民へ迷惑がかかり、賃貸物件の資産価値が下がることにもつながってしまいます。
家事・設備における安全上のトラブル
記憶障害が進行すると、ガスコンロの火をつけたまま忘れてしまい火災につながる、という重大な事故が起きる可能性もあります。
また、認知症は身体機能も低下し、階段の段差につまずいて転んでしまったりバスタブから立ち上がれなくなったりするという安全上のトラブルも数多く発生しています。
近隣トラブル
認知症の方は、賃貸物件の他の入居者とのトラブルが起きてしまうことがあります。
たとえば、認知症の方の過度な思い込みによって隣人を泥棒だと叫び回ったり、些細なことで発狂したりする行動によって他の入居者の生活に害を与えてしまうのです。
賃貸物件の入居者が認知症になったときの賃貸借契約について
管理している賃貸物件の入居者が認知症であると判明した場合、賃貸借契約はどのようになるのでしょうか。
賃貸借契約を結んだときは問題がなかったけれど、入居中に認知症を患ってしまったらどのような対応をとるべきかについてご紹介します。
「入居者が認知症」という理由で賃貸借契約の解約は難しい
入所者が認知症であると判明した場合でも、認知症を理由に賃貸借契約を解約したり、強制的に退去させたりすることは難しいでしょう。
なぜなら、認知症とはいっても初期の段階であり、言われなければわからない程度の進行具合の場合や、日常生活にほとんど支障がなかったりする方も多くいらっしゃるからです。
賃貸物件の入居者の方が認知症であると判明したからといって、初期の症状しか出ていないにもかかわらず、すぐに賃貸借契約解除・退去要請をおこなう行動は人道的、倫理的に問題があると考えられます。
しかし、認知症の進行が進む前に賃貸借契約の内容見直しはおこなうべきでしょう。
入居者本人の判断能力に問題ないことが証明された場合は入居者本人と契約内容について話し合い、必要であれば変更をおこないます。
認知症の入居者の親族と賃貸借契約について話し合う
賃貸物件の入居者が認知症になった場合、トラブル回避のために賃貸借契約を変更、見直しをおこなうべきでしょう。
しかし、認知症の入居者が「意思能力が欠如している」と判断された場合、賃貸借契約の変更や解約などができません。
その場合は認知症の入居者の親族に連絡し、今後のことについてきちんと話し合いましょう。
親族は、賃貸借契約の内容についてどう考えているのか、認知症トラブルに関する対策についてなど、入居者側の意見を把握しておくことで、今後の解決策も見つけやすくなります。
賃貸物件の入居者が認知症になったとき管理側がすべき対応
管理している賃貸物件の入居者が認知症となり、さまざまなトラブルの可能性があるなかで、管理者はどのような対応をおこなうべきなのでしょうか。
今後も入居する高齢者が増えることを見越し、適切な対応方法を理解しておくことが重要です。
ここでは、入居者の連帯保証人の協力があるケースとないケースに分けて、認知症トラブルを未然に防ぐための対応についてご紹介します。
連帯保証人の協力があるケースの対応方法
賃貸物件の入居者が認知症になった場合、管理者がすべき対応は連帯保証人への連絡です。
認知症を発症していることを知っているのか、知っているならどのような状態なのか、進行具合はどうなのか、など認識のすり合わせをおこないましょう。
また、管理者は連帯保証人の方と定期的に連絡をとり、入居者の変化や状態を共有しておくと良いでしょう。
理由は認知症が大幅に進行してからいきなり連帯保証人の方に対応をお願いしても困惑してしまうからです。
こまめに情報共有しておくことで、トラブル対応への準備がスムーズに働き、連帯保証人の方との信頼関係も高めることにつながります。
連帯保証人の協力がないケースの対応方法
賃貸物件の入居者が認知症になった場合でも、連帯保証人の協力がないというケースも少なくありません。
協力がないときは、「法定後見制度」「見守りサービス」などの対応を講じることができます。
親族へ法定後見人の申し立てを要請する
法定後見制度とは、障害や病気、高齢により意思・管理能力が不十分な方に対して認められる保護制度のことです。
●後見:判断能力が欠けている重度の認知症の方など
●補佐:判断能力が著しく不十分な中度の認知症の方など
●補助:判断能力が不十分な軽度の認知症の方など
入居者の認知症が軽度または中度の場合は、民放に定められた行為の代理の権限や同意・取り消しの権利をもつ補佐や補助が認められます。
入居者の認知症が重度の場合は、法律行為すべての代理・同意・取り消しの権利が認められるといった制度です。
法定後見制度を活用するためには、親族が家庭裁判所に申し立てをおこない「法定後見人」を決めてもらう必要があります。
申し立てが受領されると、賃貸借契約などに対する見直しを入居者に代わっておこなうことが可能になります。
見守りサービスを紹介・導入する
賃貸物件に高齢者への見守りサービスを導入することも対応方法のひとつです。
見守りサービスとは、ひとりで暮らす高齢者が安心して過ごせるように、家族に代わって高齢者の安否や健康状態を確認してくれるサービスです。
遠方に住んでいて、なかなか見に行けないという入居者の家族だけでなく、孤独死の防止や早期発見など、リスク対策にもなることで賃貸物件の管理者の導入も増えています。
まとめ
賃貸物件の入居者が認知症になると、金銭面や安全面で多くのトラブルが起きる可能性が高くなります。
事前に認知症トラブルを防ぐ対応方法を把握しておくことで、賃貸借契約などの見直しもスムーズにすすむでしょう。
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