賃貸物件に入居する際は契約の際に火災保険にも加入するものですが、実はアパートを経営するオーナーも火災保険に加入する必要があります。
しかし一棟アパート向けの火災保険は一般的ではなく、施工会社や管理会社の言うとおりに加入するのは不安だという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、一棟アパート向けの火災保険について、詳しい補償内容や入れるべき特約などを解説いたします。
併せて入居者が加入する火災保険の種類についても解説いたしますので、今後のアパート経営のご参考になさってください。
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一棟アパート向け火災保険とは?オーナーが加入すべき理由は?
まずは、オーナーが火災保険に加入しなければならない理由と、火災保険の仕組みを整理しておきましょう。
火災保険では、補償対象を「家財道具」と「建物」に分けて考えています。
家財道具とはテレビや電化製品、家具などの家の中にある個人的なものです。
借主の専有空間に含まれる家財道具は、基本的に入居者が契約する火災保険によって補償することになります。
一方で賃貸物件のオーナーは家全体である建物へ保険をかけます。
こうすることで、賃貸物件の共用部と専有部のすべてに保険を適用できるのです。
またオーナーが建物の保険に加入する際には、それぞれの居室の家財道具を補償範囲に含めることも可能です。
一棟アパート向け火災保険の補償内容
火災保険はその名前から、火災によって焼失したものだけを補償してくれると思っている方も多いかもしれません。
しかし火災保険は火災だけでなく、落雷や風水害、ひょうや雪災など、地震を除く自然災害全般による被害を補償してくれます。
自然災害以外にも、人為的な破壊行為や事故による破損、盗難による欠損などの被害も補償対象になります。
建物への車の衝突や、ガス漏れや水漏れなど、防ぎようのない被害も火災保険から補償されるので、安心です。
また建物の修復に必要な修繕費用や、アパートで暮らせない期間のホテルへの宿泊費なども対象に含まれます。
火災保険料の相場
火災保険料は建物の構造や立地、補償内容などによって細かく左右されるので、一概にこの料金が良いというものはありません。
しかし一般的には「建物時価の80%相当」が良いと言われています。
保険金額を計算する際、多くの保険会社では建物時価に80%を掛けた評価額で保険金額を計算します。
保険料を建物時価の80%にすることで、保険料を低くしつつ、支払われる保険金額は建物時価の100%を保険料としたときとほとんど変わらない金額を受け取れるのです。
一棟アパート向けの火災保険で盛り込むべき特約とは?
このように火災保険はアパート経営におけるさまざまなリスクを軽減してくれますが、特約を盛り込むことでさらにリスクを減らすことが可能です。
後でやっぱり付けておけば良かったと後悔しないように、アパートオーナー向けにどんな特約があるのか、把握しておきましょう。
家賃収入特約
自然災害や事故で賃貸物件が使えない間は家賃収入も得られないので、オーナーにとってはかなり大きいリスクになります。
そこで「家賃収入特約」を付加することで、得られるはずだった家賃収入を補償してもらうことが可能です。
ただし元々空室が5割以上の物件には適用できないので、注意しておきましょう。
家主費用特約
先ほどご紹介した家賃収入特約は、災害や事故で家賃収入が得られない場合の補償でした。
こちらの「家主費用特約」は、賃貸物件内で自殺や犯罪、孤独死などの死亡事故が起きたことが原因で空室が生じた場合、その間に想定される家賃収入が補償される特約です。
死亡事故が発生した住戸だけでなく、その影響で隣室や上下階の部屋が空室となった場合も補償されます。
建物賠償責任補償特約
火災などの人身に危害が及ぶ事故の場合、入居者や近隣住民に負傷者や死亡者が発生してしまうことも考えられます。
「建物賠償責任特約」は怪我・死亡が発生した際に、被害者との示談費用や訴訟費用、再発防止や緊急措置にかかる修繕費用を補償してくれる特約です。
マンション居住者包括賠償特約
特約はオーナーのリスクを軽減するものだけでなく、居住者の負担も減らす特約も付帯することで、居住者へのアピールポイントになります。
「マンション居住者包括賠償特約」は、住戸のなかで起きた漏水などの事故による損害を補償してくれる特約です。
居住者は基本的に家財保険に加入するので、専有部に対する特約はなくても問題はありませんが、万が一のために付けておくとより安心です。
類焼損害補償特約
大規模な火災の場合、所有している建物だけでなく隣家などに燃え移ってしまう可能性もあります。
「類焼損害補償特約」は、保険対象の建物から発生した火災などによって、他人の住宅に類焼した場合にその損害を補償してくれる特約です。
ただし別の物件から所有する建物へ類焼してきた火災については適用対象外となります。
この他にも、保険の種類によってさまざまな特約が用意されています。
アパートオーナー向けの火災保険を選ぶ際は、どんな特約が用意されているか確認し、必要なものを選びましょう。
なお今回ご紹介した特約は保険によって名称が異なる場合があります。
特約を選ぶ際には、特約の補償内容もしっかりと確認しておきましょう。
一棟アパート向けと入居者向けの火災保険の違いとは?
最後に、入居者向けの火災保険についても解説いたします。
入居者も火災保険に加入しなければならない理由
冒頭で解説したとおり、入居者は専有部に対して火災保険に加入する必要があります。
なぜなら、入居者の部屋から出火したとしても「失火責任法」により、入居者の重大な過失が認められなければ、入居者に対して責任を問えないからです。
そのため、万が一のリスクに備えるために、入居者には火災保険に加入してもらわなければならないのです。
また隣室や隣家からのもらい火で入居者の家財道具が被害に遭った場合も、上述の理由で入居者が出火元の入居者に対して損害賠償を求めることができません。
入居者が火災保険に加入することは、オーナーのリスクを軽減するだけでなく、入居者自身の財産を守ることにもなるのです。
入居者向けの火災保険の内容
入居者が加入する火災保険は、基本的に「家財保険」「借家人賠償責任保険」「個人賠償責任保険」の3つの保険から構成されます。
家財保険
家財保険は、自然災害などによって専有部内の家財が受けた被害を補償する保険です。
保険の種類によっては、盗難トラブルによる損害も対象になることがあります。
借家人賠償責任保険
入居者が火災や漏水などを発生させてしまい、借りている部屋に損害を与えてしまった場合に、オーナーに対して支払う建物の原状回復費用を補償してくれるのが借家人賠償責任保険です。
つまり入居者のために入る保険ではなく、オーナーさんのために入る保険だといえます。
借家人賠償責任保険は家財保険の特約であり、単体では加入できません。
個人賠償責任保険
家財保険や借家人賠償責任保険は自然災害や事故を補償する保険ですが、個人賠償責任保険は日常生活のトラブルを補償する保険となっています。
トラブルによって怪我をさせてしまった相手への治療費や医療費、物を壊してしまった際の修理費や損害賠償費が補償されます。
まとめ
アパート経営では、入居者だけでなくオーナーも火災保険に加入する必要があります。
オーナー向けの火災保険では、火災をはじめとした事故や自然災害などによる建物への被害や修繕費用が補償されます。
さらに特約を付けることで、家賃収入が途絶えたり、隣家へも被害が及んでしまった場合の損害賠償費用も補償範囲に含めることが可能になります。
また入居者にも保険に加入してもらうことで、共用部から専用部まで保険を適用できるのです。
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