賃貸物件を運営している両親がいると、子どもから「空いている部屋があるならタダで住まわせてほしい」とお願いされるケースは少なくありません。
両親の方から「部屋が空いているから無料で貸してあげようか」と誘う場合もあるでしょう。
一方で、いくら親子間とはいえ賃貸物件の部屋を無料で貸し出すと言う行為は問題があるのではないかと不安になりますよね。
そこで今回は、親子間の不動産賃貸は無料でおこなっても問題はないのか、生じる税金への影響についてご紹介します。
あわせて空室対策についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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親子間の不動産賃貸の気になる疑問①無料の貸し借りは問題ない?
親子間の不動産賃貸において、子どもに空室を無料で貸し出すというケースはそれほど珍しいことではありません。
しかし、気になるのがその問題性です。
「もしかしたら違反しているのではないか」「子どもに部屋を貸してと頼まれたけれど、問題ないのか」と疑問や不安に思う方もいるでしょう。
結論から言うと、賃貸物件の1部屋を子どもに無料で貸し出したとしても、すぐに税金が発生するわけでないため、大きな問題はないといえます。
所有している賃貸物件の空室を子どもに貸し出しているだけであるため、もちろん法律に反する行為にもならないので安心してください。
しかし、親子間の不動産賃貸はさまざまな部分に影響をもたらすことになるため、不動産賃貸における知識を事前に深めておきましょう。
今回は親子間の不動産賃貸に大きく関係する、貸し借りの法律「使用賃借」と「賃貸借」についてご紹介します。
①使用貸借
使用貸借とは、対価を支払わずに無料で物を借りるケースを指します。
あまり耳馴染みのない言葉かもしれませんが、たとえば友人から傘を借りて返した、本を無料で貸してもらい返還した、というケースが使用貸借に当てはまります。
親子間の不動産賃貸において、無料で部屋を貸し借りする場合は使用貸借に区分されます。
使用貸借は支払い(対価)が発生しない分、借りた側に権利も発生せず保護もされないものとして扱われる点に注意が必要です。
②賃貸借
一方で、賃貸借は対価が発生する物の貸し借りを指します。
たとえば、レンタルビデオやレンタカー、賃貸駐車場などが賃貸借に当てはまります。
不動産賃貸においても基本的に部屋を借りると家賃が発生するため、この場合は賃貸借に区分されます。
賃貸住宅の契約の際は「建物賃貸借契約」を結ぶことになるのは、賃貸借に該当するからです。
不動産賃貸における使用貸借と賃貸借の境界線
不動産賃貸において、使用貸借と賃貸借の境界線となるのは固定資産税の金額です。
家賃など、不動産の使用に発生する年間の金額が固定資産税の金額と同じくらいである場合、その不動産の貸し借りはほとんど無料になるため「使用貸借」と言えるでしょう。
一方で、不動産の使用に発生する1年間の金額が固定資産税の金額を明確に超えると、その貸し借りは「賃貸借」と認められます。
親子間の不動産賃貸の気になる疑問②影響する税金とは?
親子間の不動産賃貸によって影響する税金は以下の3種類です。
●相続税
●所得税
●贈与税
ここでは、親子間の不動産賃貸がこの3つの税金にどのような影響を与えるのかについて見ていきましょう。
相続税:評価額が軽減されない
相続税の計算は、不動産を含むすべての財産に対して評価がおこなわれます。
不動産の相続税評価では賃貸物件として利用している場合、通常の不動産と比較して家は3割、土地は2割前後相続税評価額が低くなります。
これは、人に不動産を貸していることで所有者の不動産の自由な利用が制限されているからです。
そのため通常不動産賃貸をおこなっているマンションは、相続税が安く評価されます。
しかし、親子間で無料または安い料金で部屋を貸し出している場合は、自用マンションとして評価され、評価を減少する効果は失われます。
子どもに貸しているということは、返還してもらいたい時にいつでも返してもらえる状況であり、不動産の自由度が制限されると認められないのです。
通常どおりの相続税評価額となるため、負担額が増えることになるでしょう。
所得税:経費の範囲に気を付ける
親子間の不動産賃貸で間違いやすいのが、所得税の考え方です。
子どもに無料で部屋を貸すことで家賃収入が減少し、不動産所得も少なくなることが多いでしょう。
この場合、不動産所得の減少により課せられる所得税が安くなる、と考える方が少なくありません。
しかし、ここで気を付けたいのが「必要経費の範囲」です。
不動産賃貸における必要経費と認められるのは、販売費や一般管理費やそれらに生じる業務に対して発生した費用です。
子どもに無料で部屋を貸し出したとしても、その部分にかかった費用は業務とつながりがないとされ、原則として必要経費に含めることはできません。
たとえば、5部屋のアパートを所有していて、そのうち1部屋を無料で貸し出した場合5分の1は自用マンション扱いになります。
全体の5分の4しか必要経費にできないということになり、所得税の負担はそれほど変化しなかったというケースはよくみられます。
贈与税:対象となるケースを理解しておこう
贈与税とは、価値があるものを受け取った方に課せられる税金です。
無料で受け取った場合、または本来の価値よりも大きくやすい金額で購入した場合でも贈与税がかかるケースがあります。
そのため、親子間の不動産賃貸も原則として贈与税の対象となります。
しかし、実際に無料で部屋を借りている子どもに贈与税が課せられるケースは多くありません。
「その利益を受ける金額が少額である場合、または課税上弊害がないと認められる場合には、この取扱いをしなくてもさまたげないものとする」
これは、相続税法の基本通達にある1文で、親子間の不動産賃貸は「課税上弊害がない」と認められていると考えられるケースが多く、贈与税の対象になっていないケースが多いのです。
親子間の不動産賃貸に関する不安「空室対策」
「子どもに頼まれて空室を無料で貸し出したけれど、家賃収入が減るのは困る」、このような悩みや不安を抱えている方は少なくありません。
子どもに無料で部屋を貸し出している間にも年月は経過し、不動産の資産価値は減少していきます。
安定した家賃収入を得るためにも日頃から空室対策に力を入れながら運用することが大切です。
空室対策①ターゲットの変更・見直しをおこなう
地域や賃貸物件の特徴に合わせて入居者のターゲットを設定し、競合物件と差別化を図る方法があります。
たとえば、ペットを飼いたい入居者向け、高齢者向け、外国人労働者向けなどターゲットを絞る、見直すことで費用をかけずに空室対策をおこなえます。
空室対策②敷金・礼金を廃止する
これから引っ越しを考える方の多くは、初期費用をできるだけ抑えたいと思っているでしょう。
敷金・礼金が0円の物件は、入居者にとってとても魅力的に映ります。
敷金・礼金を廃止すると収入が減少するため、慎重になりやすい空室対策ですが初期費用の減額であれば一時的な減少に抑えられるでしょう。
空室対策③募集資料の見直し
さまざまな空室対策を試す前に確認しておきたいのが「募集資料」です。
長い間同じ写真を使用していたり、写りが鮮明でなかったりしていませんか?
賃貸物件をインターネットで探すことが当たり前となった現在、募集資料は入居を決める大きな判断材料となります。
綺麗な室内の写真であるか、写真の枚数は豊富にあるか、図面はみやすいか、など入居を検討する方にとって魅力的である募集資料を作成しましょう。
まとめ
親子間で賃貸物件の貸し借りをしていても、大きな問題はありません。
しかし、相続税の軽減が失われたり必要経費の範囲が制限されたりするなど、与える影響は複数あります。
事前に不動産賃貸や税金に関する知識を深め、損をしないように行動していきましょう。
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