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2009年を皮切りに始まった人口減少を転機に、現在の日本は少子高齢化社会へ急激に変容しています。
それと同時に地方の過疎化や都市のドーナツ化現象も問題になっており、少子高齢化社会に合わせた社会環境の整備が急務となっています。
増え続ける高齢者とそれを支える社会サービスの効率的な提供のために、国土交通省が推進している施策のひとつが「コンパクトシティ構想」です。
コンパクトシティ構想は土地利用のあり方そのものを左右するため、今後の不動産投資に対しても大きく影響を与えると予想されています。
この記事ではコンパクトシティ構想とはなにか、そのメリットやデメリットと、不動産投資に与える影響を解説いたします。
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コンパクトシティ構想とは?不動産投資に与える影響について
コンパクトシティ構想とは、商業施設や公共サービスを一定の範囲に集中させて、効率的でコンパクトな人々が暮らしやすい街づくりをしようという考え方のことです。
高度経済成長期の日本では都心部の地価が高騰し、郊外の安くて広い土地を求める人が増えたことで、都心部の人口が減少して郊外の人口が増える「ドーナツ化現象」が日本全国で発生しました。
しかし少子高齢化や人口減少が進むと、高齢者でも暮らしやすい街の整備が必要になり、税収が減ることでインフラの整備が難しくなります。
さらに自然豊かだった地域にも住宅地が点在することになり、景観の良さを阻害する要因にもなっていました。
これらの問題を解決するためには、空洞化した都心部に人口を呼び戻しつつ、公共サービスをタイムリーかつ効率的に受けられるようにする必要があります。
そのために提案されているのが、コンパクトシティ構想なのです。
コンパクトシティが不動産投資に与える影響
コンパクトシティでは、住宅や医療施設、福祉施設、商業施設、役所など、生活に必要な施設を街の中心部に絞って集約させます。
くわえて公共交通機関を整備することで、若年者から高齢者まで、どんな世代でも利便性の高い都市が実現できると考えられています。
また2016年には都市再生特別措置法が改正され、立地適正化計画に基づく「居住誘導区域」や「都市機能誘導区域」、市街化を抑制する「居住調整区域」を定められるようになりました。
これにより今後住宅が集まる場所や施設が集まる場所、開発がおこなわれない場所が明確になります。
そのため、将来的な資産価値の向上が見込めるエリアとそうでないエリアも大きく分かれることで、不動産投資にも大きく影響を与えるのです。
不動産投資で知っておきたいコンパクトシティ構想のメリットとは?
ではコンパクトシティの具体的なメリットを確認していきましょう。
メリット①:各種サービスの効率化
コンパクトシティでは各種サービスが一定の地域に集約されるので、それぞれのサービスを受けるために大きく移動する必要がなく、必要なサービスを必要なときに手の届く範囲で受けられます。
併せて公共交通機関も整備されるため、車での移動も不要できめ細かな移動ができ、足腰の悪い方や高齢者の方でも安全に移動できるようになります。
また物理的な距離が近くなることで、配送の効率化やサービス間での連携など、サービスの効率化も期待できるでしょう。
さらに人口も集中するためサービスの収益も上がりやすく、民間や行政問わず、より地域住民に密着したサービスが充実することも考えられます。
メリット②:インフラが維持しやすい
少子高齢化が進み、人口が減少している地方都市では税収も減少しており、広範囲に広がったインフラの整備が年々難しくなっています。
しかしコンパクトシティで人口を集中させることができれば、その分税収も増えるため、インフラが維持しやすくなります。
また土地の広い郊外とは異なり、インフラが必要な範囲も縮小できるため、整備にかかる手間も省けるでしょう。
中心地内の移動や他都市との移動に自家用車ではなく鉄道やバスを使う人が増えれば、公共交通機関の整備も容易になります。
メリット③:迅速かつ効率的な防災活動ができる
住宅地が広範囲に広がっており、防災拠点からの距離も遠い場合、減災活動や救助活動を始めるまでの時間もかかります。
その点、集住によって市街地を一定範囲に抑えられるコンパクトシティであれば、より迅速で効率的な防災活動が可能になります。
集住すると局所的な災害が起きた場合のリスクが大きいと考える方も多いですが、そもそも大規模な都市は平地などの比較的安全な場所につくられていることが多いため、防災面にも優れていると考えられます。
メリット④:環境に優しい
郊外のように人々がそれぞれ離れて暮らしていると、発電所なども広く点在させる必要があります。
一方でコンパクトシティのように人々がまとまって住めば、必要な発電所やエネルギー輸送のためのコストも少なくなります。
さらに公共交通機関などもより多くの人々が利用するようになるため、地方の人がほとんど乗っていない交通機関よりもエネルギーを効率良く消費できます。
メリット⑤:緑地・農地・景観が保全できる
コンパクトシティでは立地適正化計画などを用いて、開発を推進する地域と抑制する地域を分けます。
そのため無秩序な開発を防ぐことや、まとまった緑地や農地の保全も可能となります。
また広々とした農地や自然がある場所は、優れた景観も生み出します。
自然や景観を保全する意味でも、コンパクトシティには役割があります。
不動産投資で知っておきたいコンパクトシティのデメリットとは?
国が注力していることもあり、メリットに着目してしまいがちなコンパクトシティですが、もちろんデメリットもあります。
デメリット①:経済的な問題が増える
コンパクトシティ化が進み、中心部に人口が集まると人口密度が高くなるため、不動産価格も自然と高まります。
住宅価格が高騰すると、その分、住宅ローンの支払い負担も増え、共働き世帯が増加するでしょう。
都市部では郊外に比べて物価も高くなるので、食費も家計を圧迫する要因になります。
さらに不動産価格が高くなると購入できる家も狭くなってしまうため、物価の安い郊外に比べてコンパクトシティでの暮らしは経済的負担が大きく、窮屈なものとなってしまう可能性があります。
デメリット②:人口増加によってさまざまな問題が発生する
人口が増えるということは、東京のように都市化が進むということでもあります。
都市化した地域では今までは保たれていたプライバシーが侵害されたり、治安が悪くなることが考えられます。
また中心部に施設が集中し過ぎると、公共交通機関の混雑や車の渋滞などの問題も発生します。
コンパクトシティは人が少ない地域で暮らしたい方にとって、暮らしにくくなってしまう可能性があります。
デメリット③:自然とのふれあいがなくなる
コンパクトシティでは人々が住む地域と、農地や緑地、自然がある地域がきっぱりと分けられます。
自然との物理的な距離が遠くなるため、郊外のような自然を身近に感じる暮らしは難しくなるでしょう。
自然が少ない都市では、地域住民の憩いの場が少なくなり、ストレスが溜まりやすくなることも考えられます。
都市計画に公園や街路樹を取り入れるなど、自然を感じられる街づくりが必要になるでしょう。
デメリット④:理論が先行してしまっている
コンパクトシティは比較的新しい考え方であり、理論が先行してしまっている部分は否めません。
実際にコンパクトシティ構想を導入している都市もいくつかありますが、成功している都市もあれば失敗している都市もあります。
そもそも街づくりとは数十年単位で進めるものであり、理論の良し悪しや成否を短期的に決めることは難しいです。
そのため今後進むコンパクトシティ化も、どうなるかは実際にやってみないと分からない、不確定要素が多い取り組みだといえます。
まとめ
コンパクトシティ構想とは、少子高齢化による都心部の空洞化とインフラ整備コストの増大を解決するために、都心部に都市機能と住宅を集約させ、効率的で暮らしやすい街づくりをする考え方のことです。
さまざまなメリットやデメリットがありますが、コンパクトシティではその土地の利用方法を定める居住誘導区域を設定できるため、不動産投資にも大きな影響があります。
コンパクトシティでの不動産売買を考える際は、居住誘導区域などの都市計画を確認し、将来的にその土地の資産価値が向上するかどうかをよく考えてから判断しましょう。
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